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エレガンス
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銀座に出かけたついでにシャネルのネクサスホールで写真展「アリュール 内なる輝き」を観る。
パリに3ヶ月いた当時もブランド品などには縁もゆかりも興味もなかった僕としては、シャネル
みたいな高級服飾店はオリンピックの表彰台よりもはるかに敷居が高いのだけれど、それでも
観たいモノは観たい。ルーベンスの絵を見たいと願うネロ少年のような心持ちで、でも図々しく
4階のギャラリーへ。

結論から言うと、観て良かった。本当に観て良かった。
リチャード・アドベン、ブルース・ウェーバー、エドワード・スタイケン、カルティエ・ブレッソン、
ウィリアム・クライン、リー・フリードランダーにアウグスト・ザンダーまで、そうそうたる写真家の
写真を一気に見られるのは、個人のコレクションを見るときの大きなメリットだけれど、それより
なにより、この写真達を選び出したスザンヌ フォン マイスの審美眼は感服以外の何ものでもない。

いままでも女性誌の広告ページに印刷されているようなコマーシャルフォトの凄さは判っている
つもりだったが、それと自分が普段撮っているような目線の延長のような写真はどこかで別物だと
思いこんでいた。
いまでも同一だとは思えないけれど、見られる対象としてのプリントが作られた瞬間から、それは
観る人たちの基準に従って選別されることになる。一人のフィルターを通した結果を今日は見た
わけだが、漉された一群の写真には広告写真とか芸術写真といった狭量な線引きはなく、ただ
「エレガンス」といった一点のみで選び抜かれた写真のみが存在するのだった。

エレガンス。
かつてキース・リチャーズの口からでたこの言葉は、僕にとってずっと心に残っているキーワードである。
美しいだけではなく、繊細なだけでもなく、乱暴で粗雑な中にも「エレガンス」は存在するのだと、
あやふやな根拠だけで信じてきたが、僕が目にした写真達は一つの結果として、エレガンスは
一通りではないのだと言い切っているようだった。

帰る途中、青山に立ち寄り、ラットホール・ギャラリーで森山大道センセの「北海道」を観る。
一人の鑑賞者の目線を観たあと、今度はその審美眼でも選ばれた写真家の目線を観るという
わけだ。
70年代の終わりの北海道。写された風景にはいまは表面的には薄れてしまった「日本的」な
情緒感が色濃く残っている。その湿っぽい感覚は写真によって写されたというよりも、森山さん
自身の中にあったウェットな情感が反応することによって撮られたようにも、それから30年経った
いま、僕の記憶に書き込まれている高度成長期の雑多で猥雑な記憶に反応しているようでもあった。

シャネルのギャラリーでみたナン・ゴールディンのカラー写真と、森山さんがとったセーラー服の
後ろ姿からは、僕は同じ種類の匂いを感じた。
やはりエレガンスは一通りではないのだ。
by ash1kg | 2009-02-09 00:25 | 写真日記
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影と光、記憶と個人的な記録
by ash1kg
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