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写真は平気で嘘をつく
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いま、ショートショート作家の星新一の伝記、『1001話を作った人』を読んでいる。

本当の読書家の方から見れば可愛いものだと思うが、僕の読書癖のスタートは星新一からだった。
そしていま暮らしている場所は星新一の父親、星一が経営していたかつてのホシ製薬 ―― 名残を残す
星薬科大学からさほど遠くないところである。
「これも縁というものかなあ」と思いつつ、太平洋戦争の前後付近のエピソードを読んでいたら驚く一節が
目に入った。

終戦となった8月15日、星新一は終戦の日の宮城(皇居)とはどんな状況になっているのかと興味を
惹かれて、皇居まで出かけていったらしい。好奇心の強い星新一らしいエピソードである。
そこで星が目にしたのは人も車もなく、静まりかえった風景だったという。

終戦の日といえば、僕の頭に浮かぶのは玉音放送を聞き、皇居に向かって土下座をして泣き崩れる
人々の写真だったのだが、この伝記によれば、あれは前日の内に撮られたヤラセ写真であり、泣き
崩れる人々という本文は捏造記事だったというのだ。

この事実は一部ではよく知られていることのようで、単純に僕が知らなかっただけなのだが、あの写真と
キャプションで植え付けられたイメージは長い間、戦争中から戦争末期の日本人のイメージそのものだった。
知らないということは本当に怖い。


一般に「コンストラクテッド・フォト」と呼ばれる類の写真がある。
ストレート・フォトとは正反対の作り込んだ情景を撮影する手法だが、コンストラクテッド・フォトの正統な
無邪気さと比べると、8月15日の写真はどことなく悪意を感じる。
だがそれは新聞という媒体に載っているという点においてのみ批判されるのであって、あの写真が終戦
から10年後の1955年の8月15日に撮影され、「終戦時の日本人のイメージ」とでも名付けられていたと
したら、それはそれで戦時中に確実に存在した日本人を表現する「良い写真」となっていたのではないかと
思う。

昨日8日は真珠湾攻撃のあった太平洋戦争開戦の日。
ジョン・レノンが兇弾に斃れて29年が経った日でもあった。
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by ash1kg | 2009-12-10 00:49 | 写真日記
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影と光、記憶と個人的な記録
by ash1kg
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