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魔界に沈む喜びを
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昨日、初めて暗室作業をするという方に講習会を開いた。
これまで何度も初めての人と暗室に入ってきたけれど、そのときは「僕も焼く、アナタも焼く」というパターンで、
今になって思えば非常に申し訳ないが作業と並行した片手間のようなものでしかなかった。

高校の写真部でそれほど丁寧な指導などあるわけもない。
僕たちは先輩が焼いてるところを脇から眺めたり、図々しく「これはなんですか?」と聞いてみたり、先輩の作業を
手伝って覚えたりと、徒弟制度のような中でみんな暗室作業を覚えてきた。
暗室作業の基本はそれほど難しいモノでもないし、そんな雑な教え方/学び方でも良いんだろうなと思って
いたのだ。

考えてみれば今は高校時代のように時間が有り余ってるわけではない。限られた時間の中で効率よく覚えて
しまわなければ、自分が本当に作りたいプリントに充てる時間が少なくなってしまう。
人にモノを教えることなど決して得意ではないが、会社にいた頃の新人教育やアナリスト達へのプレゼンを
思い出して拙い資料を作り、暗室に入る前に1時間ほど「講義」のまねごとのようなことをやってみた。

それがすべて役に立ったとは言い難いけれど、多少の予備知識にはなったのか、暗室に入ってからは、みんな
スムーズにプリント作りに没頭して、1時間も経った頃にはみんな無口になるといういつもの暗室の風景に
変わっていた。
それでも真っ白な印画紙に像が浮かんでくるのを見たときのみんなの顔は15歳の僕らの顔と同じだったし、
プリントの手順を考える頭脳ゲームのような面白さに気がついただろうということは、みんなが作業に慣れてからの
暗室内の沈黙が物語っていた。

何より残り10分というところで脱兎のごとく引伸機に駆け戻る姿が、みんながオレンジ色の光に照らされた
魔界にどっぷりと身を浸したことを表していた。
やってよかった。


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水洗場に出されたプリントが、どれもこれも自分の写真より遙かに素敵な写真だったのには参った。
自分で焼いているにもかかわらず、いつも暗室で口にするように「くそー」と小さく呟いたことは内緒だ。
by ash1kg | 2011-01-24 20:58 | 写真日記
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影と光、記憶と個人的な記録
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