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まず、上のDMの写真だけで「ああ、こういう写真は興味ないな」と判断するのはとんでもない失敗だと申し上げましょう。 と、のっけから断言できるほどこの写真展の展示はぶっ飛んでる。 長巻きの印画紙をチカラ技で現像した全紙大の長絵巻のようなプリントがギャラリー内を生き物のようにうねり、壁面はモチーフになっている建築資材や廃材、コンクリートや鉄パイプなどの写真で埋め尽くされている。 あまりのプリントの量で写真1点1点をじっくり見るということはほぼ不可能で、床に敷かれた写真を踏みしめつつこの空間全体を「観る」のがこの写真展の正しい見方なのだろう。 かつて森山大道のシルクスクリーンの展示会場に足を運んだ寺山修司が開口一番「ガソリンの匂いがするねえ」と森山さんの作品をネタに囃したそうだが、小松さんの展示は現実的に暗室の匂いがする。 膨大なプリントに残った僅かな定着液の匂いが積みかさなり、ギャラリーの入り口に立ったときにはすでに暗室に漂う独特の匂いが嗅ぎ取れるほど。それがまた展示の迫力に一役買っているようで、展示というのは写真の中身だけで片づけられるものではなく、内容と展示の方法、空間の有り様まで含めての展示なのだなあと改めて思うのだった。 マットを掛けて額に納めた写真は据わりが良い。 「そういうものだ」という先入観にピタリと嵌り、観る側も要らぬ混乱をせずとも写真を観ることができる。 だがそれは僕にしてみればなんというか進学校の朝礼を観ているようなもので ―― 襟元を緩めることもなくきちんと制服を着て、列も乱れることなく一列に並び、先生の号令に素直に反応するような朝礼だ ―― キチンとはしているが面白みはない。 それと比べると小松さんの展示は外的な定義などお構いなしで、自分の基準に従い、思うがままに展示を作り上げている。 そのお構いなしさ加減は、自分たちの写真展で床にプリントをばらまいたときの快感に通底するモノだった。 床の写真を踏みしめつつ展示を観て、この写真展は完成する。 ありそうでなかなかやらない手法なので、行儀の良い写真展を多く観ている人は是非とも行って写真を踏みつける快感を味わってもらいたいモノである。 踏んでみれば写真がいかにただの紙であるか、良く判る。そう思うのだ。 (小松浩子写真展「平行定規」 ギャラリーQ(銀座) 7月7日(土)まで)
by ash1kg
| 2012-07-05 23:20
| 写真展感想
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