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僕が高校生の頃、写真部の連中が撮ると言えば、それはそのままモノクロ写真のことだった。最大の理由は経済性だ。
当時は今と比べたらモノクロはフィルムもDPE店での現像もモノクロはひたすら安かったし、学校の暗室にはモノクロの引き延ばし機しかなかった。 自分でできるという意味ではモノクロの優位性はいまでもそれほど変わらないけれど、デジタルカメラがこれだけ隆盛しているいま、デジタルカメラを使ってまでモノクロにこだわるのは、頑固にもほどがあるように自分でも思う。 正規の写真部員ではなかったが(どこかに属するということが昔は今以上に苦手だったのだ)、部員の友人に頼んで部員以上に暗室を使い倒していたので、「写真と言えばモノクロでしょう」という感覚が今でもある。暗室の中で暗視能力の低い目をこらしながらネガや印画紙と取っ組み合っていた頃の原体験的記憶はいまでもちゃんと生きているようだ。 とはいうものの、世の中は光と同じように色で溢れかえっているわけで、僕がどれだけ確固たる理念でモノクロ写真と対峙していても、天気の良い5月の休日には美しく輝く色に惹かれてしまうのである。 そういうとき、僕は誰に言うでもなく「ま、たまには良いよね」などと、わけの判らない言い訳をして色に惑わされたり、色に遊ばれたりする。 昨日、あまりの天気の良さにカメラを背負って羽田に向かった。 滅多なことでは人に教えない内緒の場所で海風に吹かれながらのんびりと離陸していく飛行機を眺めていた。 モノクロならただのグレーになってしまう真っ青な空に、跳ねて光る魚の鱗のように飛行機が胴体を晒しながら旋回していく。 「カラーが似合う風景ってのはちゃんとあるもんだよな」と、僕は目的の場所に向かって小さくなっていく飛行機を追いながらそう思った。
by ash1kg
| 2007-05-22 00:44
| 寫眞萬手控
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