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社会人になってから20年、これまでかならず池袋で乗降できる定期を買い続けてきた。 ときには会社から支給される交通費にプラスし、ときには通勤に使う経路とは違う経路であっても ともかく僕の手元にはいつも池袋駅を通り抜けられる定期券があった。 池袋を離れてすでに17年。もはや僕の記憶にある池袋は遠いものになってしまった。 いま池袋に降り立っても、かつて僕が目にしていた風景はそこにはない。 個々の建物、裏通り、路地には僕の懐かしい思い出が染みこんでいるけれど、街に漂う雰囲気は かつて僕が日常的に呼吸していたそれとは明らかに違う。 かつて池袋市民であった僕は過去のモノとして、街を外から訪れる多くの人と同じように生きていく。 それは生まれてから四半世紀を越えて池袋という街で育った僕にはいささか覚悟のいる決断である。 潮時というのはこういうことを言うのかも知れない。 ほぼ半日、カメラを片手に池袋の街を歩き回り、記憶と目の前にある風景をダブらせながら、 その差異に諦めに似た感覚を覚えた。そして今や係累もつながりもない池袋を離れることにした。 帰り道、僕の手には池袋という文字のない定期があった。
by ash1kg
| 2009-05-03 23:32
| 写真日記
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