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デパートの壊滅と記憶の消失
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仲間たちとの集まりがあって久しぶりに吉祥寺に出かけてきた。
井の頭線で駅に着いてまず目に入ったのは吉祥寺ロンロンがアトレに変わるという案内だった。

吉祥寺に暮らしたことがあるわけでもなく、懐かしくはあってもそれほど強い思い入れがあるわけでもない。
だがロンロンがなくなって、どこにでもある「アトレ」に模様替えするというのは、見慣れた風景がまた一つ
消えるということなのだ。
ロンロンショックも止まないうちに待ち合わせの東急へ行く途中、さらなる追い打ち。
伊勢丹に閉店の案内があった。

僕が子どもの頃、デパートに行くというのはそれだけで十分すぎるほどエキサイティングな娯楽だった。
それは高度成長期という時代 ―― 存在はするが手が届きそうで届かない時代 ―― のせいだったかも
しれない。だが買い物などせずとも、「なんでもある」ことがそれだけでスペシャルだったのだ。

池袋には西武(あるいは東武)、有楽町にはそごう、新宿には小田急に京王に伊勢丹、八重洲には大丸、
札幌には丸井今井があり、四条河原町には阪急。僕の持っている街の記憶の幾ばくかはその街にある
デパートと密接に結びついている。
昨今の経営不振によるデパートの閉店は僕(あるいは僕たち)の記憶をモップで丁寧に ―― いささか
乱暴に ―― 消し去っていく作業でもあるのだ。たとえそれが経済の競争原理の過程で当然に起こること
だとしても。

人が集まり、街が作られ、そこに商店ができあがる。
その場から生まれた商店は外からやってきた巨大資本に駆逐され、やがて経済原理に則って唐突に消える。
店が消えて初めて、街の人々は巨大な店舗が巨大な引力を持っていると錯覚していたことに気づくのだ。


(吉祥寺・ハモニカ横町)
by ash1kg | 2010-01-30 23:30 | 写真日記
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影と光、記憶と個人的な記録
by ash1kg
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