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散歩のついでに立ち寄ったブックオフで、1冊の写真集に目が止まった。 「New York Now and Then」とタイトルされたその写真集は、50年ほど前に撮られた ニューヨークの写真と、同じアングルで写された「今」のニューヨークを見開きで並べたもの であった。 写真に写せるものとはいったい何なのか。これまでずいぶん考えてきたけれど、いまひとつ ピンと来る答えが得られないでいる。 存在しないものは写しようもなく、したがって失われてしまった過去は写せず、しょせんは レンズの画角に収まる狭いの表面だけを写しとるのが関の山なのではないかと思っている。 もちろんギミックにあり得ない光景を作り出してしまったり、さも意味ありげな撮り方をする こともできるが、それは写真から受ける錯覚であって、写真がまとった不可思議な印象を 丁寧に引きはがしていけば、最終的に残るのは平面に押しつぶされた表面的な事象のみ ということになる。 僕は元々、何かテーマを決めて撮ることは苦手だし、整えたり加工したりして光景を作り 出して撮るのも面倒で嫌いである。 そういう意味では偉そうに「写真が云々」と言ってみたところで、ただただ凡庸にたまたま 出くわした光景を固定化しているにすぎない。なんだか買えない書籍を図書館でコピー しているのと似ている気分である。 それでもどこかで「いま」というものと密接につながっているのではなかろうかと思って 撮ってきたのだが、それはどうも違ったようだ。 今日、「NOW」と名付けられた写真集の中にすでに消えてしまったワールド・トレード・ センターの姿を見つけて、写真ができることというのは「今にいちばん近い過去」を撮る ことだけなんだなと気づいてしまった。 だからといって何が変わるわけでもない。 それしか撮れないなら、それを撮るだけのことだ。
by ash1kg
| 2010-04-12 02:16
| 写真日記
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