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コダックのない世界を考えた
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昨日からの腰痛が治まらず、そろそろと動いていた午前中、「コダックに連邦破産法申請の可能性アリ」とロイターが伝えたことを知った。

フィルム産業は広告の主体がデジタルに移行した時点で斜陽産業になることは確定した。
写真家や写真愛好家がどれだけいたところで、広告に費やされたフィルムの量と比べれば、僕らが使うフィルムの量なんてものは微々たるものでしかない。
イーストマン・コダックがフィルムやケミカルだけで喰っているわけではないとはいっても、趣味での消費であれだけの巨大な企業を支えるのはどだい無理なのだ。

僕の好みから言えば、ネガフィルムから作られるプリントは、デジタルのそれとは比べものにならないぐらい好きだ。
曖昧さがあり、どれだけ追い込んでも追い込みきれない緩さがあり、制御しきれない深さがある。プリントにしても黒の黒さがまったく違う。
だが、それはあくまで「プリント」という物質においての話で、(あまり使いたくない言い方だけれど)表現ということを主眼に置けば、写真であろうが絵画であろうが、書であろうが、小説、演劇、映画、なんでも良いように、フィルムだろうがデジタルだろうが、それはどうでも良いのだよなという気持ちもある。
差異もなければ優劣もない。

写真とはなんぞやという哲学的な問いに答えることは、今の僕にはまだできないが、プロセスを考えると面白いことに気付く。

カメラにフィルムを詰め、撮影するということは光 ―― 光が闇を照らして映し出した世界 ―― をカメラという
闇に取り込む作業だ。
光は闇によってしか形を留めることはできず、そうして光はフィルムに写しとられる。
やがてフィルムは現像され(タンクという闇の中で光を失わないように加工され)、暗室という闇の中で引伸機に掛けられる。ネガに光が当てられ、印画紙には外の世界から写しとられた光が焼き付けられる。
まるで写しとられた光を闇から取り出す作業のようではないか。
仮にフィルムにできてデジタル画像にできないことがあるとしたら、このようなプロセスかもしれない。

12月まで通っていた講座で気付いたのだけれど、暗室作業を知っていてフォトショップを初めて使う人と、暗室についてはまったく知らない人のフォトショップの使い方には違いがある。
前者は暗室でやることをフォトショップ上でも踏襲し、暗室ではできないことをやるにしても、その境界線をはっきりと意識して使う。だが、暗室作業が未経験の人はある意味で自由に、ある意味ではお構いなしにすごい加工をする傾向がはっきりとあった。

無論、どっちが良くて、どっちが悪いと言うことではない。先に言ったように「表現」ということを主眼に置けば、自分の作りたいモノを作りたいように作って良いのだから。
そういう違いがあるということだけだ。

さて、仮にコダックが破産法を申請したらどうなるのか。
日本の企業再生法と同じで通常の操業は認められる。事業は継続される。
だがフィルム事業が赤字であるならば、合理化という名目の元にフィルムの生産は切り捨てられるはずだ。

一つの可能性がある。
フィルムの需要はかつてより少なくなったが、まだ確実に需要はある。
ならば生産する側の規模をイーストマン・コダックの大きさよりぐっと小さくして、また事業の継続に必要な額に価格を見直し、生産を続けるということはできるはずなのだ。それは100人規模の中小企業サイズなのかもしれないし、大田区の町工場のサイズなのかも知れない。だがそれはできる。
種類はそれほど多くないかも知れないが、なくなることはない。僕はそう思う。

写真人気・カメラ人気のおかげでフィルムを使う人は増えたように感じるが、それだけではまだ写真の本当の面白さは味わえていない。
今のうちに闇に取り込んだ光を再び取り出す作業をぜひやっておいてもらいたいと思う。
そうして初めて写真は完結するのだ。

個人的にはTri-Xがなくなったらとーっても困るのだけれど、印画紙に昔ほどの選択肢がなくなった以上、フィルムで撮り、印画紙に焼き付けるという「遊び」ができるだけで満足すべきなのかも知れない。
いっそのこと写真愛好家が出資して、一つ会社を作っちゃえば良いのにと思ったり。
そうなったらそうなったで、きっと「Tri-Xを優先させろ」 「いやT-Maxだ!」 「いやいやPX125でしょ」 「そこはコダクロームの復活でしょう」 「いやいや復活させるならPortraのNCでしょ」と、議論百出になるのは確実である。
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by ash1kg | 2012-01-06 00:23 | 写真日記
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