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「ハレ」と「ケ」 ~ MOTOKO写真展 「田園ドリーム」
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昨日、銀座を通ったついでにニコンサロンでMOTOKOさんの「田園ドリーム」を見てきた。
両親の実家がどちらも農家ということもあってか懐かしく感じることばかりで、あまり難しいことは考えずに自分の記憶の中に在る農家的風景と重ね合わせ、記憶を読み出す作業のようなことをしていた。

ご本人によれば農村のいわゆる「ハレ」にフォーカスして展示をしたと書いてあったけれど、「ハレ」というのはあくまで「ケ」があっての「ハレ」であって、「ハレ」だけを見せられて「ケ」とのギャップの大きさがわかる人が果たしてどれだけいるんだろうという感じがしたのも事実。
僕自身が農村出身ではないのになんとも不遜な考えだと思ったが、非日常だけを切り取ってしまうと ―― もちろん意図を持って選び出されているのは百も承知で ―― 農村部ってこんなに良いところなんだというメッセージとして受け取ってしまう人も中にはいるんじゃないのかなと。

だいたいにおいて農村部の「ケ」などというモノは(僕が見た限り)かなり面倒くさいものだ。
別に見張り見張られているわけではないのだが、隣近所の様子を常に伺っている感じは幼い僕でも感じたし、そうして集められた情報は井戸端会議で共有され(たいていにおいて誤った情報として)、尾ひれが付き、レッテルが貼られ、そのムラの常識のように変化していく。

祖母も曾祖母も「ハレ」の場ではかなり張り切っていたが、同時に必ず愚痴や悪口がついてまわった。子供だった僕はその生々しさがちょっと怖く感じたことを覚えている。
長い時間の中で醸成されてきた突出することを嫌い、怖れるムラ社会ではそれが普通なのかもしれないけれど、当時でさえ人間関係が希薄と言われた東京で生活していた子供の僕からしても、その様子はちょっと異様とすら感じられるものだった。

何ごとに置いても、良いこと悪いこと両方があるものだが、農村部ではそういったものがすべて人間関係から派生してくるので、表裏一体というより、不可分という印象の方が強い。良いとか悪いというような類のことではなく、人間関係がいちばんのベースになっている以上、否が応でも発生してしまうものなのだ。

それも含めて今では懐かしい記憶であり、MOTOKOさんの写真はハレの部分を的確に切り出しているように感じたのだった。
by ash1kg | 2012-04-09 10:05 | 写真日記
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影と光、記憶と個人的な記録
by ash1kg
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