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写真を誰かに見せる方法には代表的な例として写真展、写真集、WEBの3種類がある。 いちばん手軽で低コストなのはWEBで、いちばん手間がかかるのが写真展、いちばんコストが高く なるのが写真集だ。 森山大道センセは著書の中で「写真展はライブで写真集はアルバム作りに似ている」みたいなことを 言っていたが、実際に本という形式でまとめようとあれこれやってみると、ああ言い得て妙だなあと感心 する。もちろん大方そんな感じなのだろうなと推測はしていたが、現実に写真のヤマと対峙してあれこれと 試行錯誤を繰り返しながら工程を進めていくと、事前に考えていたよりもはるかにしっかりと写真と 向き合わなくてはならなくて(もちろん自作であるがゆえに平行して本を作る知識もあれこれと詰め 込まなくてはならないのだが)、これは思ったより勉強になるなあという感じだ。 僕はもともと写真集という形式がそれほど好きではなくて、やるならアルバム作りよりライブだよなと 思ってきた。 小説なら、たとえばブックオフで買った100円の文庫本ですら2,3日は楽しめるというのに、4000円も 5000円もするような写真集を見るには4~5分で足りてしまうという投資に対する回収効率の悪さと、 ストーリーの乏しさに原因がある。 写真集にはその写真群を認識・理解するための「読み解く」という作業が必要なわけだが、それは個人 個人の主観に依存する作業であって、結果として写真集そのものが共通言語になることは容易ではない。 少なくとも小説のように同じ物語の筋道を誰もが通るというのは稀である。従ってページをめくることも もどかしいようにドキドキワクワクしながら物語に没入することは難しいし、そもそも写真集にストー リー性はあっても、顕在化していないストーリーを無条件で見出すことはほぼ不可能なのだ。その辺の 難しさが小説と比べて写真集が売れない理由なのではないかと思ってきたし、写真は作り手の意図を 表現する手段と言いながら、意図を伝達する力が低い「写真集」という方法を選ぶのは矛盾するでは ないかと思っていたのである。 今回はニューヨークにいた3日半のあいだに撮った7000枚の写真から90枚の写真を選び出して、 本を組んでみようとしている。自分以外の人に見せるということを切り捨てて、完全に自分のために 作ろうとすると、写真集というのは実に効果的な手段だということが判ってきた。 作る面白さ(写真選びとか配列も含めて)もある上に、自分の撮る写真の良いところや弱点などが 工程の中ではっきりと判るのである。これは実に面白い(凹みそうにもなるけれど)。 ------------------------------------ 写真はA6サイズで「仮本」を作った状態。 雑誌のようなモノを含めて、「本」を作ることは初めてではないので、すべての工程を自力でこなすとはいえ、 今回はオーソドックスな手順を踏んで本にまとめてみようと思っていた。 台割りを作り、レイアウトシートを作り(この辺は雑誌作りの工程である)、ついでに完成形がイメージ しやすいようにコピー出力したプリントを使って仮本まで作ってみた。これでおおよそどんな感じのものに なるか、あるいは何が足りていて何が足りないかが良く判るようになった。 これまでの経過からいうと、自分の記念用に作るにはなかなか良い感じである。仮本を作ったことで 「製本・装丁」自体にもちょっと自信が出てきた。そんなところだ。 とは言いつつも「あくまで作るのは『本』であって『写真集』ではないのだ」と言い張りたくなるところを 考えると、僕はまだ写真集そのものには信頼を置いていないのだなと思う(でも客観的に見れば間違い なく「写真集」だと思われるのだけれど)。
by ash1kg
| 2007-12-08 01:48
| 寫眞萬手控
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