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別世界、みえないもの、音の奥行き
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昨日の話。
以前、leica氏のエントリーで超高級オーディオの話を読み、機会があったら一度連れて行って
欲しいとお願いをしていた。
そんなにすぐに実現なんてしないよなあと高をくくっていたのだが、leicaさんのご厚意で話は急激に
進み、お願いしてから10日足らずで総計ン千万円のハイエンド・オーディオが出す音を聞けることに
なった。

それが昨晩のこと。




まだ明るい夕刻、1ヶ月前に凄惨な事件があった場所にはまったく似つかわしくないうきうきの気分で、
CDで重みを増したカバンを提げて秋葉原に降り立った。
CDショップで試聴用のアルバムを調達していたleica氏と合流し、明神下交差点近くのダイナミック・
オーディオ5555
へ。
目指すは4階の「H・A・LⅢ」。H・A・Lとは「ハイエンド・オーディオ・ラボラトリー」の略だとか。
そのものではないかとオーディオ音痴のただのロック/ジャズ好きはおののきつつも、おずおずと
フロアへ。

奥の試聴室にはスピーカーが林立し、並んだ椅子の前にはプレイヤーやアンプが整然と並んでいる。
と、これだけなら量販店でも目にする光景だ。それぞれに付けられた値札の金額にも目の玉が
飛び出そうになるけれど、何よりスゴイのは音だと聞いていたので、まずはフロアのすべてを掌握する
島さんに「どんな風に違うんですか?」と初心者丸出しの質問をぶつけると、「聞けば判ります」と
自信満々かつ端的なお答え。そりゃそうだ。百見は一聞にしかずのオーディオの世界。
leica氏のお知り合いのIさん、Tさんに薦められるまま「特等席」という前列中央の席へ。

「さて、じゃあまずはこれから聞いていただきましょう」とプレーヤーにセットされたのはExtremeの
Ⅲsides To Every Story
ソニーのプレイヤーがCDをゆっくりとローディングして、突然音が響き出す。部屋中が音で満たされる。
左から右へ、右から左へ、奥から手前へ。音が縦横無尽に駆けめぐる。これか奥行きというのは。
聞けば、Extremeのアルバムを最初に聴かせるのは洗礼・通過儀礼のようなもの。奥行きのある
音というのを実感するには具合の良いアルバムなのだとか。

奥行きのある音と言っても判りにくいだろう。簡単に言ってしまえば映画館でスクリーンに何も映し
出されないまま、音だけを聴いている感じだろうか。それが目の前にあるスピーカー群のうちの
たった2本から出る音で繰り広げられるのだ。
別々に録音したものをミックスダウンしているはずなのに、ドラムスはちゃんとヴォーカルの向こう側
から聞こえてくる。まるで目の前で演奏しているかのような音である。

「じゃあどんどん聴いていきましょう」というIさんの薦めに、持参したCDをお願いする。ローリング・
ストーンズの「Tattoo you」。僕の人生を決定づけたオープンGのリフから始まるこのアルバムが
超高級オーディオで聴いたらどんな音がするのか。これまで数千回は聴いてきたであろう音と
どう違うのか、それが知りたかったのだ。

結論から言うと録音の出来はすさまじく酷いものだった。
音が平面的で厚みも何もあったものではない。リマスター版の音源は多少マシになっていたけれど、
オリジナル版は聴けたモノではなかった。
もちろんこういうオーディオシステムに向いている音源とそうでない音源というのはちゃんとあるそうで、
たまたまこれはラジカセ向きだったということらしい。確かにストーンズなんてこんなにすごい部屋で
じっくり聴くようなシロモノではない。ラジカセのヴォリュームをむりやり上げて、割れてしまった音で
聞く方が正しいような気もする。

気を取り直してクラシックからポップスまで他のアルバムを何枚か聴かせて貰う。
一番すごかったのはIさんが持参してくれたキース・ジャレットの「Koln Concert」。観衆のちょっと
した声、ピアノをミュートする音、自宅のチープなミニコンポでは聞こえなかったキース・ジャレットの
呻き声。本当に小さな誤差のような音がちゃんと音として存在している。コンサート会場のどんな
高い席よりも、もしかしたら演奏をしている本人よりもいい音で聴いているのかも知れない。誰も
いない目の前の空間なのに、グランドピアノと格闘しているキース・ジャレットの指使いまで見える
ようだった。

もちろんこんな超ウルトラ級の高級オーディオは誰もが買えるモノではない。でもベストな環境と
音源に向いたシステムであれば、聞こえる音はこういう音になるのだということは知っていて損では
ない。あとは自分の経済力に照らしたときに、どこのラインまで妥協をするか、だ。島さん、Iさん曰く、
普通の部屋で聴くなら50万ぐらいのシステムであればまあ「聴ける」ものになるとのこと。確かに
頑張れば手が届かないわけでもない。

2時間の至福の後、秋葉原の近くで軽く食事。「あのケーブルが10何万ですから」とか「酔っぱらって
ずるっと行ったら、40万のカートリッジ、サヨナラ~ですからね」など、IさんやTさんの口から出てくる
金額のとんでもなさに聴いているこっちの経済感覚もだんだんおかしくなってきて、「なんだかノクチの
70万なんて安いよね」とか「ノクチなんて楽勝で買えるじゃん」などととんでもないことを口走る
始末であった。

金額もさることながら、世の中にはスゴイ世界があるものである。
島さん、Iさん、Tさん、leicaさん、本当にありがとうございました。また連れてって下さい。
by ash1kg | 2008-07-10 23:58 | 写真日記
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影と光、記憶と個人的な記録
by ash1kg
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